黒田剛監督の戦術がすごい!ポスト森保と言われる理由や日本代表監督の可能性を解説!

黒田剛 戦術

今季、J1昇格一年目にして首位を走り続けるFC町田ゼルビア。そして、そのサプライズともいえる躍進を牽引するのは、高校サッカー界の名将と呼ばれた黒田剛監督です。

2024年シーズン前には誰も予想できなかった、FC町田ゼルビアの快進撃によって、一気に黒田剛監督への関心が高まった人も多いのではないでしょうか。

「町田ゼルビアって、なんでこんなに強いの?」

「黒田監督って、どんな人なの?」

「日本代表監督の可能性はあるの?」

今回は、FC町田ゼルビアを指揮する黒田剛監督の戦術や、日本代表監督の可能性を解説していきます

この記事を読み終える頃には、黒田剛監督の采配や、町田ゼルビアの勝敗から目が離せなくなっているはずです。

黒田剛監督はどんな人?

黒田剛画像引用元:GOETHE

2022年、J2リーグ15位に沈んだ町田ゼルビアを、就任からたったの一年でJ2リーグ優勝、J1昇格へと導いたのは、高校サッカー界の名将と呼ばれた黒田剛監督でした。

ここでは、町田ゼルビアの躍進を牽引している黒田剛監督のプロフィールと、経歴を紹介していきます。

黒田剛監督がどんな人なのか気になる人は、まずこちらからご覧ください。

黒田剛監督のプロフィール

 黒田剛監督のプロフィールは、以下の通りです。

  • 名前:黒田 剛(クロダ ゴウ)
  • 生年月日:1970年5月26日
  • 年齢:54歳(2024年6月現在)
  • 出身地:北海道札幌市
  • 出身校:登別大谷高校→大阪体育大学
  • 指導歴:青森山田高校コーチ(1994年)/青森山田高校監督(1995〜2022年)/FC町田ゼルビア監督(2023年〜)
  • ライセンス:日本サッカー協会公認S級コーチ
  • 影響を受けた指導者:岡田武史(元日本代表監督)

黒田剛監督の経歴

北海道札幌市出身の黒田剛監督は、1986年に入学した登別大谷高校(現・北海道大谷室蘭高校)と、その後進学した大阪体育大学で、選手としてサッカーを経験しました。

大学卒業後の1993年からは、星野リゾートのコーチに就任。同時にホテルマンとしての勤務もこなしています。

1994年に青森山田高校のコーチに就任すると、翌年1995年には、青森山田高校の監督に昇格。当時20人ほどの部員しかいなかった青森山田高校を、就任後すぐに全国高校サッカー選手権へと導きます。

そして、監督就任から10年後の2005年に行われた第40回高校総体において、初の全国大会優勝を果たすと、それから11年後の2016年には、全国高校サッカー選手権で悲願の初優勝を成し遂げました。

その後も、高円宮杯U-18プレミアリーグ優勝や、2018年と2021年の全国高校サッカー選手権制覇などの輝かしい功績を残すとともに、柴崎岳選手(鹿島アントラーズ)や、松木玖生選手(FC東京)をはじめとした、数多くの選手をJリーグに輩出してきました。

2022年10月、青森山田高校の監督退任を発表し、2023年、FCゼルビアの監督に就任。就任一年目にして、J2リーグ優勝を果たし、クラブをJ1の舞台へと導きました。

今季2024年シーズンは、リーグ前半から首位を走る快進撃をみせ、2・3月度のJ1リーグ月間最優秀監督賞を受賞しています。

FC町田ゼルビアの快進撃を牽引する戦略がすごい!

FC町田ゼルビア画像引用元:J.LEAGUE.jp

今季J1リーグで快進撃を続ける、FC町田ゼルビアのプレースタイルは「堅守速攻型」

体を張った堅い守備でボールを奪うと、カウンターアタックでボールを一気に前線へと運んでいきます。さらに、セットプレーや、ロングスローを使って、シンプルかつ効率的にゴール前でのチャンスを作り出すのも特徴です。

そして、この町田ゼルビアのプレースタイルを高い強度で統率するのが、監督就任2年目の黒田剛監督。

「勝つ=守れること」という持論を語る黒田剛監督の戦略は、“勝つ戦略”ではなく、“負けない戦略”です。

ここでは、町田ゼルビアの快進撃を牽引する戦略の中から、黒田剛監督の特徴ともいえる、「守備における原理原則の徹底」と、「直線的かつシンプルなパスサッカー」について解説していきます。

この2つの戦略を意識すると、これまでとは違う目線で町田ゼルビアの試合を観れるようになるでしょう。

守備における原理原則の徹底

町田ゼルビアのプレースタイル「堅守速攻」の土台となるのが、黒田剛監督の代名詞ともいえる「強固な守備力」です。

町田ゼルビアの監督に就任した昨シーズン、J2リーグ15位と低迷するチームの立て直しは、「守備の改革」から始まりました。

そのなかで、黒田剛監督がもっとも重要視してきたのが「守備における原理原則の徹底」です。原理原則とは、いわゆる“基本的なプレー”をさします。

黒田監督は「守備における原理原則の考え方」を、クルマの運転にたとえて話しています。

分かりやすくいえばクルマの運転と同じです。免許取り立ての若葉マークの頃は基本に忠実に運転しますが、数年経つと、例えば安全確認を怠ったり、制限速度を守らなかったり、緊張感が欠落するものです。そうすると、大きな事故に繋がる可能性は高くなります。ディフェンスの原則も同じです。プロの選手でも何年か経つと、状況確認やリスク回避を怠ったり、また守備時にマークを外しても誰かが何とかしてくれるだろうと、少しずつ責任感が緩くなっていきます。それが失点の原因となり、改善不能な習慣として根付いていくのです。

引用:GOETHE

黒田剛監督は、守備における原理原則をチームに徹底させるため、試合での失点シーンは選手・スタッフと一緒に映像で確認し、責任の詳細を明らかにしていきます。そして、一つ一つの失点シーンを細かく分析した上で、守備における細かな決まりごとを、徹底的に叩き込んでいくのです。

この妥協を許さない黒田剛監督の守備へのこだわりについて、町田ゼルビア所属の日本代表GK谷晃生選手は次のように話します。

「守備に対する約束事は、ある程度どのチームにもあると思います。ただ、黒田監督は日々の練習から、求めることがあればはっきりと口にするなど曖昧なところがない。特に、シュートを打たせないことや、自分たちが危険と判断するエリアに相手を進入させないことへのこだわりは強く感じます」

引用:週プレNEWS

選手たちの守備意識を変えていった、黒田剛監督による「守備における原理原則の徹底」が、町田ゼルビア快進撃の基盤となっていることは、間違いないでしょう。

直線かつシンプルなパスサッカー

強固な守備に目が行きがちな町田ゼルビアのプレースタイルですが、決して得点能力が低いわけではありません。

実際、今季17節を終えた時点での得点数は28と、リーグ2位タイの成績となっています。

町田ゼルビアの攻撃スタイルは、速攻型の「直線かつシンプルなパスサッカー」です。

相手からボールを奪うと、ダイレクトプレーを使ってスピーディーに前線へボールを供給。ときには、ロングボールを蹴り込み、一気にゴール前での得点チャンスをつくります。

ショートパスを横に繋ぐ、いわゆる“ポゼッション重視のサッカー”とはまったく真逆のスタイルです。

黒田剛監督は、自身の攻撃哲学について次のように語っています。

「ボール保持率のことがよく話題になりますが、そのデータで下から数えたほうが早いチームがリーグの首位を走っているなんて、今までなかったことですよね。

そういう意味では、そうした数字(に基づく評価の優劣)にいかに根拠がなかったかということをウチが証明しているのかもしれませんし、今後もブレずに町田らしいサッカーをしたい」

引用:週プレNEWS

今季のリーグ戦データを見てみると、町田ゼルビアの平均ボール保持率は、リーグ20チーム中19位の43.2%、パス総数はリーグ最下位の20位となっています。

このデータからも、ボール保持にこだわらない町田ゼルビアが、「直線かつシンプルなパスサッカー」で多くの得点を生み出していることがわかるでしょう。

ポスト森保と言われる理由

黒田剛画像引用元:Number Web

FC町田ゼルビアの快進撃により、今や、“ポスト森保”の最有力ともいわれる黒田剛監督

森保ジャパンが、2024年アジア杯でベスト8にとどまったこともあり、今、“日本で最も勝てる監督”として、ポスト森保候補に名前が挙がってくるのは、ごく自然な流れといえます。

そして、多くの人が期待を寄せるのが、チームを勝利に導く黒田剛監督のチームマネジメントにあるのではないでしょうか。

ここでは、黒田剛監督がポスト森保として期待されている2つのチームマネジメント、「ワンチームでの組織づくり」と、「圧倒的な言語化能力」について解説していきます。

黒田剛監督のチームマネジメントが、今の日本代表にとって必要な理由が見えてくるはずです。

ワンチームでの組織づくりへの期待

現在の日本代表メンバーは、レアル・ソシエダの久保建英選手を筆頭に、“個の能力”で世界のトップで対等に戦える選手が増えてきました。

しかし、日本が、ブラジルやドイツ、スペインといった世界の強豪国相手に勝利をおさめるためには、チームとしての一体感が絶対条件となるのも事実です。

黒田剛監督が指揮する町田ゼルビアがまさしくそうでしょう。

日本代表GK谷晃生選手や、元日本代表DF昌子源選手といった“個の能力”に優れた選手はいるものの、現在の快進撃を支えているのは、黒田剛監督が統率する、ワンチームの組織づくりだと考えます。

黒田剛監督は、チーム作りのモットーを次のように語っています。

「勝つこと、勝ち切ること、またはクラブとして、それからチーム組織としてっていうことを考えたときには、やっぱりワンチームをつくっていく、みんながこのチームを支えようっていうようなベクトルをみんながそこに向けていくことによって、強固な組織ができてくると思うんですよ。だから、一人一役じゃないんですけど、みんなが自分の仕事に対して100%気持ちを注ぎ、100%の仕事ができる、そこに何よりの時間をかけ本当に命をかけてやっていく。だからこそ負けたときには悔しさも人一倍あり、勝ったときはみんなで肩を組んで喜べるという、やっぱりそういう一体感というものを生み出していかなければだめだと思う」

引用:HNK

黒田剛監督が掲げる「ワンチーム」には、選手や監督、コーチだけではなく、フロントや広報といった、裏方としてチームを支えている人たちも含まれます。

チームに関わる全ての人が一枚岩となる。この組織づくりが、日本代表が世界で勝つための基盤になるのではないでしょうか。

圧倒的な言語化能力への期待

黒田剛監督がチームマネジメントで大切にしていることの一つに、コミュニケーションにおける「言葉の伝え方」があります。

現在、快進撃を続ける町田ゼルビアでは、選手やコーチ陣が舌を巻く「秀逸な言葉選び」で、どんな質問にも論理的かつ、分かりやすく答えているようです。

そこには、日常の中で出会った「良い言葉」や「気になるキャッチフレーズ」を、コツコツと一冊のメモ帳に書き記していく、黒田剛監督の努力の積み重ねが隠されています。

黒田剛監督は、自身のコミュニケーションにおける役割を次のように語ります。

「私の仕事は、彼らをその気にさせること、彼らの心に火をつけること。しゃべって伝えたその瞬間から、彼らに実践されること。要するに“なるほど”と思って、自分たちの判断が変わって行動に出なければ監督の存在意義はないんです。それができなかったときは多くの反省を持ち、やっぱり自分の言語に力がなかった、またはいい言葉をチョイスすることができなかったというふうに、自分自身をとがめていくことしかないだろうし、日々、そんな格闘かな」

引用:NHK

日本代表の監督を日本人にするメリットの一つに、「言語を余すところなく伝えられる」ということがあります。

このメリットを最大限に生かすためにも、「圧倒的な言語化能力」をもつ黒田剛監督のチームマネジメントに期待が高まっているのではないでしょうか。

日本代表監督の可能性は?

黒田剛画像引用元:SOCCER DIGEST Web

黒田剛監督が、日本代表の監督になる可能性はあるのでしょうか。

まずは、黒田剛監督が日本代表監督に対する考えを語ったYouTube動画(動画内31分30秒付近)があるので、こちらをみてみましょう。

「もし日本代表監督になったら」という突然の質問に戸惑いながらも、しっかりと自らのビジョンを語る黒田剛監督に、将来の“黒田ジャパン”の可能性を感じますね。

また、これまでのW杯でベスト16の結果を残してきた4人の監督のうち、3人は日本人監督になります。

2010年W杯南アフリカ大会の岡田武史監督、2018年W杯ロシア大会の西野朗監督、そして2022年W杯カタール大会の森保一監督です。

このことから、次期日本代表監督も日本人の中から選ぶ可能性は十分にありえます。

一方で、森保一監督は日本史上初となるW杯終了後の継続就任が決まった監督です。

この監督続投は、W杯カタール大会をベースとした、森保ジャパンの更なる進化を期待した監督人事と考えられるため、2026年W杯北中米大会までの監督交代は考えづらいでしょう。

もちろん黒田剛監督も、今は町田ゼルビアのチームマネジメントに集中したいところ。

W杯北中米大会が終わる2年後、町田ゼルビアの成績次第では、日本代表監督就任への期待が現実のものとなるかもしれません。

黒田剛監督の手腕に世間の反応は?

黒田剛画像引用元:SOCCER DIGEST Web

黒田剛監督が指揮する町田ゼルビアは、J1リーグで躍進を続けるものの、ロングスローや、球際のフィジカルを重視した革新的なプレースタイルに、賛否の声があるのも事実です。

黒田剛監督の手腕について、Xに投稿されたコメントを見ていきましょう。

まずは、賞賛する声がこちらです。

次に、批判的な声がこちら。

賞賛の声には、戦略やマネジメントだけではなく、黒田剛監督の人間性を讃えるものが多く、一方批判的な声には、黒田剛監督の言動に対するものが多い印象です。

批判的な声には、強者に対する「やっかみ」の感情が含まれている可能性もありますね。

実際、球際のプレーが荒いと批判されるプレースタイルを切り取っても、町田ゼルビアのイエローカード枚数は、リーグ17節を終えた段階でリーグ5位。町田ゼルビアよりもカード枚数が多いチームがあるにもかかわらず、批判が集中するのは黒田監督の采配です。

さまざまな批判の声に対し、黒田監督は次のように話します。

「いま社長やクラブ、ファン・サポーター、スポンサーが私に一番期待しているのは、勝つこと、優勝すること、J1に昇格することだと思うんです。そのために理想を追求することが最適であれば、理想を追い求め続ければいい。そうでなければ別の選択をするのが当然だと思います。我々プロ監督のミッションは『理想の追求』ではないはずです。プロ監督は結果を出すために試行錯誤しながら、全力で戦うのが仕事だと私は思っています。失敗は誰のせいでもない、矢印は全て自分です。」

引用:Number Web

賞賛の声も批判の声も受け止めながらも、矢印は全て自分に向ける

「勝利」を目指して、自らに課せられたミッションに向き合う、黒田剛監督の強い意志が伝わってきます。

まとめ

今回は、FC町田ゼルビアを指揮する黒田剛監督の戦術や、日本代表監督の可能性を解説してきました。

この記事のまとめは以下の通りです。

  • FC町田ゼルビアの快進撃を牽引する戦略の特徴:「守備における原理原則の徹底」/「直線的かつシンプルなパスサッカー」
  • ポスト森保と言われる理由:日本代表に必要な「ワンチームでの組織づくり」と「圧倒的な言語化能力」を持ち合わせたチームマネジメントに期待が集まるため
  • 日本代表監督の可能性:2026年北中米W杯終了後、町田ゼルビアの成績次第で可能性が高まる
  • 黒田監督の手腕に対する世間の反応:賛否の声があるが、「勝利」を目指して自らのミッションに向き合う強い意志を持っている

今季、J1リーグで快進撃を続ける町田ゼルビア。黒田剛監督の戦術やマネジメントを知ると、より注目度が高まりますよね。

さあ、黒田剛監督の采配によって、町田ゼルビアは「J1昇格即制覇」という快挙を成し遂げられるのでしょうか。

黒田剛監督と町田ゼルビアの挑戦は、まだ始まったばかりです。